トオマス・マン『ヴェニスに死す』

トオマス・マン『ヴェニスに死す』

このところトーマス・マンの評論に読み耽っています。学生時代に拾い読みした新潮社の全集の懐かしいこと!キャスで『トニオ・クレエゲル』を取り上げてみて、いかにトーマス・マンが自分の精神の故郷となっているかを再確認しました。若き日の痛い思い出を捨て去るのではなく、年を食った今こそそれを徹底して内面化したいと思います。

さて『ヴェニスに死す』は1913年という、第一次世界大戦を目前に控えた時代の作品です。この頃のマンは長篇『魔の山』に行き詰まっており、息抜きのように短篇の創作に向かったようです。生と精神の対立、市民的な生活と魔神的な芸術の相剋という主題は、この作品にも現れています。またコロナ禍の初期によく読まれたカミュの『ペスト』の陰に隠れた感がありますが、『ヴェニスに死す』もまた感染症を描いた小説として、いま読まれてもよいのではないでしょうか。

今夜から夜10時あたりに朗読します。断りなくお休みすることもあります。よかったらゆっくりしに来てネコ🐱

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